*
TOPResearchMemberContacts Japanese
Overview
List of the current core topics
Publications /Presentations
 2019
 2018
 2017
 2016
 2015
 〜2014
Doctoral Thesis
Master Thesis
Bachelor Thesis

卒論(特別研究)課題例(2020年度)

1.配水管内環境に対して責任をもった浄水処理プロセスの提案

 わが国が人口減少社会に移行して10年以上が経過し、上下水道システムもこれに適応させなければならない。水需要量の減少が進む地域での配水を考えれば「配水管内の環境管理」が重要となり、①浄水処理による配水系へ流入する微粒子等の制御、②配水管網の水理設計、③洗管技術といった段階的な対策が考えられる。本研究は特に①に着目し、管内環境の制御という観点から適切な浄水処理法を検討する。具体的には砂ろ過や膜ろ過、マイクロストレーナ等の除濁処理を取り上げ、ろ材の種類や大孔径化、凝集条件といった影響因子を把握することで、微粒子除去能からみた処理方法の多様化や必要十分な処理条件を提示する。

2.次世代高度浄水処理システムの総合機能評価

 微量汚染物質制御の効率化を目的として、オゾン処理と生物活性炭処理を組み合わせた高度浄水処理プロセスのオゾン処理を促進酸化処理に置き換える等、いわば「高度浄水処理の高度化」が国内外で進みつつある。その一方でこの変更が他の単位操作(例えば生物活性炭の微生物群集の構成や処理性)に及ぼす影響は明らかにされていない。本研究では、高度浄水処理における単位操作の変更例として、促進酸化処理の導入、ろ過位置の変更、活性炭材質の変更をとりあげ、一つの変更が浄水処理システム全体に及ぼす影響を、化学物質と微生物の観点から総合的に評価し、望ましい次世代高度浄水処理システムのあり方を提示する。

3.水道水質モニタリングシステムの高度化

 オゾン処理や活性炭処理などの高度浄水プロセスを導入しても、水道水の安全性や快適性についての需要者の満足度はなお低い。水源における水質事故のモニタリング技術や、配水システム内での残留塩素等の最適化とあわせてはじめて、安全かつ快適な飲料水供給が実現できる。本研究では水道水の快適性を確保するためのカルキ臭評価技術(総揮発性窒素計)と新規プローブ物質を用いた極低濃度での残留塩素モニタリング技術の開発・実証を行う。また、精密質量分析を用いた化学物質汚染や藻類増殖の検知等、原水水質異常の迅速分析手法の開発に取り組む。

4.浄水処理過程における化学物質変換過程の体系化

 私達が日々の生活で用いる化学物質の環境・健康リスク評価は一部の例外を除き、原体の評価に限られてきたが、これらの物質が水処理過程・環境中で変換された場合のリスクについても十分考慮する必要がある。また、自然由来の物質についても、それらの変換による影響も含めて管理する必要がある。本研究では最新の反応理論や分析技術を組み合わせて、人為・自然由来化学物質の変換過程を明らかにし、新たな管理体系を提示する。今年度は、消毒副生成物であるハロ酢酸やN-ニトロソアミン類の前駆体の構造を決定し、生成機構の解明、浄水プロセスでの制御方法の提案を目指す。

5.給配水システムにおけるレジオネラ属菌の制御

 わが国では塩素消毒によって水道水の微生物リスクが管理されている。しかし、近年の水需要減少による水の滞留傾向や水温上昇等によって状況は変化しており、給配水システムにおける病原微生物の再増殖が問題になる場合がある。本研究は水系感染症の重要な原因菌であるレジオネラ属菌に焦点を当て、実態調査や室内実験、リスク評価手法等を駆使して給配水システムにおけるレジオネラ制御のための水質要件を抽出する。今年度は配水管内でのレジオネラやその宿主アメーバの存在実態を培養法や定量PCR等によって把握するとともに、レジオネラ再増殖特性を把握するための室内実験系の確立を目指す。

6.市民との双方向コミュニケーションに基づく上水道システムの持続的経営と管理手法の構築

 地域社会の変容に伴って上水道事業もさまざまな影響を受けている。例えば今後、水道料金は上昇せざるを得ないが、本来は社会インフラのサービス水準と市民負担の許容範囲に関する議論が必要である。本年度は、アンケート調査に基づき適切な料金水準を設定する手法を提示する。一方、地元管理されているような小規模水道では浄水処理や消毒が十分でない場合も少なくない。原水の種類、浄水処理の方法、消毒方法に照らして、必要な水質測定項目や頻度について検討し小規模水道に対する現実的な水質管理方法を提示する。